三菱商事の食料品事業の位置づけ
19/4に組織改正後は、食料関連事業は「食品産業グループ」が手掛けている。
商社の食料ビジネスモデル
商社の食料分野でのビジネスモデルは「食品サプライチェーンの囲い込み」である。
原料・製品を取り扱うあらゆる業態に属する企業と取引・資本関係を結んでいる。商社は、伝統的に取引関係上で重要な企業に対して自ら出資することで系列に囲い込むモデルを取っている。
以下の通り、全世界で非常に後半な事業基盤を有している。
食品化学本部
食品化学本部は、食と健康の分野で、事業経営型の子会社 三菱商事ライフサイエンス(株)を中心に、付加価値の高い事業を展開しています。
食品化学分野とバイオ・メディカル分野での事業経験を基盤に、新興国の経済力向上に伴う社会の都市化・高齢化と、成熟国での医療費抑制等の社会的要求の高まりを受けて市場が拡大している健康化学分野での事業に取り組んでいきます。
注目の事業会社としては、Fujifilm Diosynth Biotechnologiesが富士フイルムとの合弁事業でバイオ医薬品受託製造を行っている。該社は、世界大手のバイオ医薬品CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)であり、米国および英国に製造拠点を有しており、高い技術力と実績を基盤に、製薬企業をはじめ付加価値の高いサービスをグローバルに提供する。
食料本部
食糧本部は、穀物・飼料・食品原料に関連する原材料調達・安定供給を担う本部として、環境変化に対応した継続的な競争力強化を実行しつつ、サステナビリティ経営にも重点を置き、集荷・製造・加工・販売事業を展開しています。国内外の市場環境・業界構造の変化を敏感に捉え、常にサプライチェーンを変革していくことで、消費者ニーズに合致した商品を供給できる事業基盤の構築・強化に取り組んでいます。
主要な事業会社として、
東南アジア最大の農産品商社オラム・インターナショナル(シンガポール)
- Olam社は、1989年にナイジェリアでナッツトレーディング会社として創業以降、M&A等により事業規模を拡大し、世界65か国で44の商品事業を展開する大手農産物事業会社である。オラムは高単価で利幅が大きいコーヒー豆やカカオ、ナッツなどが中心。小麦やサケと違って寡占が進み、オラムの世界シェアはいずれも1~3位だ。取引先にはスイスのネスレなど世界の食品大手が並ぶ。総合商社の食料品分野での大型買収は失敗に終わるという業界通説があり、今までも丸紅ガビロン、三菱商事のセルマックなどは買収後に減損処理を余儀なくされていた。今回、セルマック後に三菱商事の食料事業での2度目の大型M&Aとして当時は注目が大きかったが、19/3期にはオラムでも減損▲278億円を計上するなど、その成果は道半ばである。
米国の穀物集荷輸入事業を行う米国のAgrex, Inc.
とうもろこし、大豆、麦等を米国内で取り扱うほか、アジア向けを中心とする輸出取引を行っているが、19/3期は米中貿易摩擦の影響を受けて▲10億円の減損処理を余儀なくされた。
世界最大の農地拡大余地を有するブラジルにおいて、アジアを中心とした穀物需要増加に対応すべく、2013年に子会社としてAgrex do Brasil S.A.を設立。大豆・トウモロコシなどの穀物の集荷・販売・輸出に加え、農業資材販売、穀物生産等を手掛けている。米国から中国への輸出は貿易摩擦の影響で減ったものの、産地の南米シフトによりこちらは堅調な成長を見せている。
世界最大規模のブラジルのコーヒー農園を営むIPANEMA AGRICOLA S.A.
コーヒー豆はローソン等にも卸されている。
生鮮品本部
生鮮品本部は、生産・調達・製造・加工・販売に亘る垂直統合モデルを通じ、消費者のニーズに応えながら、魚・肉・米・野菜・酪農品等の生鮮食材や加工品を安定的に提供しています。人口、産業、消費構造の変化へ柔軟に対応し、消費者起点の発想で、川上から川下までの各事業を主体的・自律的に経営していきます。それぞれの機能事業において、コスト競争力強化、付加価値化等により競争優位性を確保しながら、持続的成長を果たしていきます。また人材教育についても、グループ各社と連携しながら、顧客第一、現場力のある人材を育成していきます。
水産分野
Cermaq Group
東洋冷蔵株式会社
水産資源の持続的利用を通じて、日本の食文化を守り、継承し、豊かな社会の実現に貢献致します。
畜産
Indiana Packers Corporation
伊藤ハム米久ホールディングス株式会社
ジャパンファームホールディングス株式会社
フードリンク株式会社
消費財本部
消費財本部では、国内および海外市場における生活必需品に係る製造・販売事業を幅広く展開しています。生活必需品に関わる製造販売事業を集約することで、三菱商事が長年にわたり培ってきた消費財ビジネスに関する知見を強化していきます。日本が有する良質な商品やサービスの海外市場での水平展開を通じ、日本のビジネスパートナーや海外の消費者へ新たな価値を提供し、社会的課題の解決に取り組んで参ります。