三井物産│ヘルスケア・医療部門の取組は?│注力分野で商社No1実績

ヘルスケア部門は三井物産の注力分野

三井物産は中計2023の中でヘルスケア領域を成長分野として掲げている。人口の増加、所属の増加、高齢化、疾病構造の変化などにより医療インフラ(病床)の供給不足や医療費のインフレなどが社会的課題となっており、三井物産はアジアにおける病院経営に参入し事業規模を拡大している。

三井物産はヘルスケア・医療分野の投資規模ベースでは、7大商社でダントツNo1である。

出所:三井物産│中期経営計画2023

三井物産のヘルスケアセグメント

ヘルスケア・医療関連は、「生活産業グループ」内のヘルスケア・サービス事業本部が手がけている。

以下は、20/3期のセグメント収益だが、薄い黄色部分が「(ヘルスケア・サービス事業本部が所属する)生活産業グループ」の収益に該当する。同グループは収益規模は20/3期で320億円となり、三井物産の7つあるグループ内で4番目の規模を誇る。

ヘルスケア関連では、コロンビアアジアの株式売却益が20/3期に寄与した。

 

 

事業部別の取り組み

19/12時点で本部人員は177名を数え、「ヘルスケア事業部」、「ファーマ事業部」、「サービス事業部」の3部体制を敷く。

ヘルスケア事業部

19/3に約2200億円でアジア等の新興国を中心に病院83病院(総病床数は15000超)を展開するマレーシアの医療オペレーターであるIHH Healthcare (”IHH”)の株式を追加取得し三井物産は33%の持分を有する筆頭株主となった。

IHHのプラットフォームを梃にして、「場×ヒト×モノ×サービス×情報」の5つの要素をつなぎあわせたヘルスケアエコシステムの構築を掲げながら、アジアでの病院経営のノウハウ蓄積およびネットワークの拡充を行うのが狙いである。

出所:三井物産│インベスターデイ資料

 

 

成長戦略としては、IHHの事業アセットから、①中国・インドの中間層の取り込み②病院周辺事業(専門クリニック、臨床検査、画像診断、健康診断、薬局など病院の隣接産業)のスピンアウト機会③医療データプラットフォーム活用による新規サービスの展開の3つの戦略を推し進める。

 

IHHグループ概要
マレーシアに本拠を置く、アジア最大手の病院グループ。特に、シンガポール、マレーシア、トルコ、インドでのプレゼンスは非常に高く、シンガポールの民間最大手病院グループのParkway、マレーシア第二位の病院グループPantaiや民間医科大学のInternational Medical University、トルコ最大規模のAcibadem、インド2位のFortisなどを傘下につ。

 

IHH以外の病院事業では、Intentional Colombia US を通じてアジア4各子で中間所得層向けに病院事業を行うコロンビアアジアグループを手掛けてきた。18/3期に出資比率を16%から26%に引き上げた後に、19/9期にはインド事業を残す形で中核の東南アジア事業を全て売却し、マネタイズを実行した。三井物産が参画して3年間でコロンビアアジアの売上は1.6倍、EBITDAは3倍に増えたというから驚きである。

透析事業では、16/8よりシンガポールのDaVita Care社に20%出資参画している。同社は、東南アジア、中国にて50を超える透析クリニックを展開している。

中国では、1000億円規模のヘルスケア特化型ファンドを設立し、病院事業やヘルスケア周辺産業に対して投資を行う考えである。

三井物産の戦略地域とされている中国とインドに関して、中国はヘルスケアファンドを通じたファンド投資モデルおよびIHHを通じた事業拡大、インドではコロンビアアジアのインド事業やIHHのFortisグループを通じた事業拡大を企図しているものと考えられる。

国内では、16/11に本邦医療機器メーカーのPHC(旧・パナソニックヘルスケア)へ出資した。同社は、糖尿病患者向けの血糖値測定器や、電子カルテ、保冷庫・培養機器などのライフサイエンス事業を手掛けており、IHHやDaVita等の投資先医療機関に対する製品導入や海外ネットワークを活用した販売支援などを行っている。

医療機関のトータルサポートを行う総合メディカルホールディングスに出資しており、「医療モールの開発」、「病院の経営支援」、「価値ある薬局の創造」に注力していたが、20/2に売却を行い、195億のキャッシュインを創出した。

ファーマ事業部

ファーマ事業部は、国内外の製薬関連の企業への出資を行っている。

  • 医薬品原薬・通関体、の受託製造・販売を行う日本マイクロバイオファー(”MBJ”)
  • ジェネリック医薬品メーカーの富士製薬工業
  • ロシアのがんやリウマチ向けの医薬品を製造するR-Pharma
  • ウェアラブル端末やアプリ等を用いた未病・予防事業を手掛けるインドのGOQii
  • 米国を中心に17ヵ国で病院電子カルテ情報から集積したデータベースを構築し、マーケティング支援サービスを行うTriNetX

サービス事業部

サービス事業部においても、国内外の医療周辺サービス企業への出資を行っている。

 

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