商社マンが薦める「心躍る/胸が熱くなる商社小説」9作を紹介します!

こんにちは。COVID-19禍で外出ができない中で、今まで積読していた小説に手を取り始める方も多いのではないでしょうか。

今回は、商社マンであれば誰もが一度は手に取った事があるであろう、商社を描いた経済小説を紹介したいと思います。

就活生、現役若手商社マン、さらには商社に興味のある方など幅広くおすすめできる内容となってます。

黒木亮 『シルクロードの滑走路』 (2009)

あらすじ

総合商社のモスクワ駐在員である小川智は、中央アジアのキルギス共和国に旅客機を仲介する案件を進めていた。しかし、ソ連崩壊後の混乱の渦中にある小国では、国際ビジネスの常識がまるで通じない。難航を極める交渉は、小川の熱意と粘りで一歩ずつ合意に近づくが…。ユーラシアの厳しく美しい自然と、多難な歴史を背負う民族の姿を背景に、国際ビジネスの現場をスリリングに描き出す経済小説の傑作。

おすすめする理由

黒木亮さんは私が一番好きな経済小説家さんです。黒木さんの小説はほとんど読みました。

黒木亮さんは三和銀行や三菱商事勤務時代に国際金融の第一線で戦ってきた方ということもあり、どの小説にもそのエッセンスが散りばめられています。小説としても面白いですが、経済小説としても非常に勉強になる部分も多いです。

商社マンや金融マンを目指す方にはぜひ一度手に取ってほしいと思います。

黒木亮さんの略歴

1957年北海道生まれ。早稲田大学法学部卒業後、三和銀行に入行。同行の海外派遣制度でカイロ・アメリカン大学(英語版)に留学し、修士号(中東研究科)を取得。同行ロンドン支店国際金融課でトルコ・中東・アフリカ向けの国際協調融資、プロジェクト・ファイナンス等に関る。
その後、ロンドンの証券会社を経て、三菱商事ロンドン現地法人に入社。同社でプロジェクト金融部長を務めながら2000年10月に上梓した国際金融小説『トップ・レフト』で小説家として一躍脚光を浴びる。その後、2003年7月に同社を退社し、専業作家になった。
以来、コンスタントに作品を発表し続けている。1988年からロンドン在住。

こんな人におすすめ!

  • 新興国で奮闘する商社ビジネスを知りたい
  • 航空機ファイナンスのビジネスに詳しくなりたい
  • ロシアやユーラシアでのビジネスに興味がある

 

 

 

黒木亮『エネルギー』 (2014)

あらすじ

大手総合商社燃料部員の金沢明彦は、イラクで原油取引の交渉中、ロシア・サハリンの巨大ガス田開発を命じられる。同じ頃、下位商社役員で中近東に名前を轟かす亀岡吾郎は、野望に燃える通産官僚十文字一と結託し、イランの巨大油田開発に日本政府を巻き込む。シンガポールでは、米系投資銀行出身の秋月修二がエネルギー・デリバティブで中国企業をカモろうと企む。世界を相手に資源開発に挑む男たちを壮大なスケールで描く超大作。

おすすめする理由

こちらも黒木さんの代表作です。世界のエネルギー開発の第一線で働く商社マンの姿がリアルに描かれています。主人公の金沢が働く五井商事のモデルは三菱商事であるといわれています。

商社の資源開発やインフラプロジェクトで活用される、プロジェクトファイナンスの世界がかなり仔細に描かれていますので、商社のエネルギー、金属、インフラ系部門での勤務されている方、これらの領域を志望される方にはおすすめです。

こんな人におすすめ!

  • 国際資源戦争の舞台で戦う商社ビジネスを知りたい
  • エネルギー開発ビジネスやプロジェクトファイナンスに詳しくなりたい
  • 本腰を入れて長編小説を読破する時間と余裕がある

 

 

 

 

 

山崎豊子 『不毛地帯』 (2009)

あらすじ

主人公の壹岐正(いきただし)は陸軍中佐で大本営参謀。終戦の詔に対し、参謀総長の命令書が出されていない以上武装解除に応じる必要がないと解する関東軍部隊の説得に努めた。日ソ中立条約を犯して侵攻してきたソ連軍に拘置され、一方的な軍事裁判の結果重労働25年の刑を宣告されシベリアに送られる。そこで11年の抑留生活をおくることになる。帰国後参謀としての経歴を大門一三に買われ大門が社長を務める総合商社の近畿商事[4]に入社。航空自衛隊の次期戦闘機選定争いの仕事で辣腕を振るうことになる。その後大門に進言して「業務本部」を立ち上げ近畿商事を本格的な総合商社にするための努力を重ねるが、旧来の役員の反発を受ける。社内の役員からの反発などを受けながら出世を重ね、後半部では日米の自動車会社の提携、イランでの石油発掘プロジェクトにも携わっていく。イラン・サルベスタン鉱区での石油発掘に成功した壱岐は、近畿商事社長の大門に勇退を進言し、みずからも近畿商事を辞めてしまう。そして、壹岐は第三の人生として、長期シベリア抑留者の親睦団体である朔風会の会長となり、シベリアへ現地で死んだ日本人の墓参りと遺骨の収集に行く。

おすすめする理由

私が好きな山崎豊子さんの代表作です。唐沢寿明さんの主演でドラマ化もされました。

主人公の壹岐正のモデルは伊藤忠に実在した人物であるとされています。シベリアでの11年間の抑留生活という想像を絶する過酷な日々を生き帰国についた主人公は、参謀の経験を買われて近畿商事に入社し、戦闘機のトレード事業などで頭角を発揮していきます。小説の時代背景は現代とは違いますが、現在の商社ビジネスに通ずる中東での石油発掘プロジェクトなども出てきます。

 

山崎豊子さんの略歴

大阪市生れ(1924-2013)。京都女子大学国文科卒業。毎日新聞大阪本社学芸部に勤務。その傍ら小説を書き始め、1957(昭和32)年に『暖簾』を刊行。翌年、『花のれん』により直木賞を受賞。新聞社を退社して作家生活に入る。「沈まぬ太陽」、「白い巨塔」、「華麗なる一族」など代表作多数。

こんな人におすすめ!

  • 日本を代表する小説家である山崎豊子さんの代表作を読んでみたい
  • 戦後の時代背景や、商社が発展してきた歴史を紐解いてみたい

 

 

 

 

 

松村美香『アフリカッ!』(2013)

あらすじ

総合商社のシステムエンジニアだった村上大輝は、念願叶いアフリカ開発部へ。新規のビジネスモデルを探すべく人類発祥の地へと飛ぶ。ところが文化の違いは想像以上。地元民を相手に、いったいどんな商売が可能なのか? ついには自ら病に倒れてしまい――エチオピアからケニア、ロンドン、そしてザンビアへ。若き日本の商社マンが、世界を舞台に暴れまわる!? 国際開発コンサルタントの著者が贈る、痛快お仕事小説。

おすすめする理由

青年海外協力隊にも在籍し、開発コンサルタントとしても活躍されていた松村美香さんの小説です。

国際開発のコンサルタントだった松村さんのリアルな描写や苦労体験などが描かれており、勉強になります。

商社マンを描く小説でアフリカが舞台になっているものはほとんどないと思うのですが、こちらはおすすめです。

 

松村美香さん略歴

松村 美香は、日本の開発コンサルタント、小説家。元青年海外協力隊の隊員。
『ロロ・ジョングランの歌声』で第1回城山三郎経済小説大賞を受賞。
中央大学経済学部を卒業。大学卒業後、自動車販売買社に就職するが、青年海外協力隊に合格。協力隊での活動後、アメリカ合衆国に4ヶ月間語学留学、その後、1990年に日本総合研究所に入所1993年、海外貨物検査株式会社に転じた。また会社勤務しながら、社会人向けの夜間大学院であった筑波大学大学院ビジネス科学研究科に入学。

こんな人におすすめ!

  • 20代後半の商社マン/ウーマン(主人公と同じ)
  • アフリカ(ケニアやエチオピア)の苦労体験を小説を通じて味わいたい
  • 新興国での開発経済の実態を知りたい

 

 

 

 

深田祐介『炎熱商人』(1984)

あらすじ

中堅商社のマニラ事務所長小寺は本社の要請で未経験のラワン材取引きに手を染めた。しかし現地の人々との信頼の上にビジネスを進めようとする彼の前に、厳しい現実が次々とたちはだかってくる……。炎熱の地で困難な国際ビジネスに情熱を燃やす男たち。しかもそこは戦争の傷跡を色濃く残す地であった。
第二次大戦当時の日本軍とフィリピン人との関わり合いを一方に、現代の国際商戦をもう一方に置いて語る巧みな展開と、壮大なスケールで描きあげられた直木賞受賞作品。

おすすめする理由

深田祐介さんも好きな小説家の一人です。こちらも時代背景はやや古いですが、今の商社をささえるシニア世代の商社マンの方達には非常に有名な本なので、若手社員の方は「炎熱商人読みましたー」と部長や本部長とのコミュニケーションツールになるかもしれません!?

深田祐介さん略歴

東京生まれ。早稲田大学卒業後は観光会社や外国航空会社など複数の企業を転職しつつ執筆を続ける。その後転職した日本航空では、ロンドン支店駐在員や本社広報室次長などを歴任し、ロンドン勤務から帰国後の1970年代後半以降に執筆活動を再開して1976年最初の著作であるエッセイ『新西洋事情』で第7回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。1982年に経済小説『炎熱商人』で第87回直木賞を受賞[3]した。その後日本航空を退社して作家として創作活動に専念した。

こんな人におすすめ!

  • 木材取引にかける商社マンの命がけの熱い戦いを小説を通じて体感したい
  • 高度成長期の商社の雰囲気を知りたい
  • 日本とフィリピンの過去の歴史に興味がある

 

 

 

深田祐介『神鷲(ガルーダ)商人』 (2001)

あらすじ

インドネシア大統領第三夫人となった直美は、異国での軋轢に傷つきながらもスカルノの愛情を励みに、確固たる地位を築き上げていく。一方、彼女を利用し、巨利を貪り続けようとする日本商社の思惑と、それをめぐる男たちの野心は何をもたらしたのか。果たして、戦時賠償はインドネシアを救うという神鷲だったのだろうか。

おすすめする理由

こちらも深田祐介さんの代表作の一つです。バラエティー番組でも活躍されているデビィ夫人の物語です。

この小説では、商社が悪者役で描かれていますが、当時はファシリテーションペイメントも商社機能の重要な役割だったわけで・・・。

こんな人におすすめ!

  • 太平洋戦争後のインドネシアを舞台にした日本の商社の取組を知りたい
  • デヴィ夫人の苛酷でドラマティックな人生を垣間見たい

 

 

 

 

 

 

城山三郎『毎日が日曜日』 (1979)

あらすじ

日本経済の牽引車か、“諸悪の根源”か。毀誉褒貶の著しい日本の総合商社の巨大な組織とダイナミックな機能、日本的体質と活動のすべてを商社マンとその家族の日常生活とともに圧倒的な現実感で描く。世界に類のない機動力を持った日本の総合商社の企業活動の裏側で展開されるなまなましい人間ドラマを通して、ビジネスマンにとっての“幸福な人生”とは何かを興味深く追求した話題作。

おすすめする理由

城山三郎さんも日本を代表する有名な経済小説家です。高度経済成長期に、会社のために人生をささげた商社マンの話。

家族との別居、老後の虚無感、など(商社だけでなく)サラリーマンの悲哀を描いた小説です。

1970年代半ばのベストセラーだそうで、私にとっては当時の時代背景を知るのに参考になりました。

こんな人におすすめ!

  • 城山三郎×商社の小説を読んでみたい
  • 高度成長期の商社マンのがんばりと苦悩を知りたい

 

 

 

松本清張『空の城』(1982)

あらすじ

名の通った中堅クラスだが、トップになれない──その焦りから石油部門へ進出を急いだ巨大総合商社が、冷酷な国際商戦の渦に巻き込まれて、またたくまに膨大な赤字を抱え、ついに倒産。渦中にいた四千人の社員の何人が、その無残な敗北を予測しえただろうか?一方、仕事は放任、熱狂的な陶磁器マニアだった社主が見ていたものは……。石油という国際的な商品の“魔性”に命運を賭けた大企業の野望と挫折を、徹底した海外取材をもとにリアルに描く、《小説・安宅産業の崩壊》

おすすめする理由

ミステリー分野で日本を代表する松本清張さんの経済小説です。安宅産業の石油精製プラント建設による破産劇を題材にした小説です。石油精製技術やプロジェクト金融の仕組みなども小説を通じて学ぶことができます。

松本 清張 略歴

1953年に『或る「小倉日記」伝』で芥川賞を受賞。1958年には『点と線』『眼の壁』を発表。これらの作品がベストセラーになり松本清張ブーム、社会派推理小説ブームを起こす[5]。 以後、『ゼロの焦点』『砂の器』などの作品もベストセラーになり戦後日本を代表する作家となる。

こんな人におすすめ!

  • 石油プラント関連の知識をつけたい
  • 実話である安宅産業の破綻から商社のリスクマネジメントについて考えてみたい

 

 

 

 

高任和夫『商社審査部25時』 (2005)

あらすじ

緊急情報が畿内商事の審査部第3課長、千草のもとに入った。呉の造船会社が危ない――。同時に、福岡の取引先企業の社長が急逝し、事態は風雲急を告げる。千草の眠れない日々がはじまった。日の当たらない部署にいるサラリーマンたちの熱き闘いをリアルに描いた傑作。

おすすめする理由

作者は元三井物産の審査部。トレードと事業投資を行う商社では、リスクマネジメントが非常に重要。昔の商社は審査部がその機能を担う事が多かったです。営業部門と比べて光の当たりにくい部署ではありますが、こういう縁の下の力持ちの組織に支えられているのだと考えさせられました。

高任和夫 略歴

大学卒業後三井物産に入社。1983年、『商社審査部25時 知られざる戦士たち』で兼業作家としてデビューする。数年の広島勤務を除いてほとんどを東京本社に勤務し国内審査管理室長まで務めたが、バブル崩壊後に審査部門の負担が増大し執筆時間が取れなくなったことから退職を決断。早期退職制度を利用し、1996年、50歳で退職した後は作家活動に専念する。

こんな人におすすめ!

  • 商社にふりかかるデフォルトやトラブルなどを知恵と経験でトラブルシュートしていく熟練の審査マンの姿を知りたい
  • 比較的分量の少ない小説を読みたい

 

 

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