総合商社7社　当期利益・総資産・株主資本の過去10年の変遷は？

ゴールデンウイークの前後に総合商社7社の20年3月決算が出ますが、その前に19年3月期決算までの過去10年間の収益変遷について整理しておきたいと思います。

総合商社7社の当期利益の推移 (10/3期～19/3期)

過去10年間の商社の収益トレンドは？

• 2010/3期
  • 各社ともリーマンショックの経済的打撃を最も被った年となる。アジア全体の景気後退や金属・エネルギーなど資源関連を中心とする商品市況下落、円高など外部環境の変化がビジネス実需にもネガティブに影響した年となった。
  • 一方で年の後半から資源価格の上昇などもあり、上位4社は当期利益で1000億円以上を確保。
• 2011/3期
  • 資源価格の上昇や自動車を中心とする機械市況の回復により７社とも業績をリーマンショック以前の水準にまで回復させた。住友商事の会計基準変更あり。
  • 11年3月に東日本大震災が発生。商社も各事業分野での被害はあったが、原発停止で火力発電所向けのLNG供給が必要となり震災特需が起きる。
• 2012/3期
  • 資源価格の上昇が引き続き商社の利益を牽引。特に金属やエネルギー分野での利益が突出。
  • 今まで当期利益ベースで不動の１位であった三菱商事（4500億）に対して、三井物産（4300億）が肉薄する年となった。また、伊藤忠が今まで3位が定着だった住友商事を追い抜いた年でもある。伊藤忠の快進撃は今年から始まったといっても過言ではない。住商は4位に後退するも過去最高益を記録。
• 2013/3期～2014/3期
  • 12年より欧州債務危機が深刻化。中国経済も減速を見せ、鉄鉱石や石炭需要が減退し、金属資源の価格が下落に転じ始める。一方で13年よりアベノミクス効果により円安・株高が進行、国内景気も改善に転じ始める。
  • 金属（鉄鉱石、石炭、銅など）や原油の商品価格の下落により、収益水準は下落。2014/3期には、三菱商事、三井物産、伊藤忠が会計基準を米国からIFRSへ変更。
• 2015/3期
  • 各社とも市況悪化による減損損失でダメージ。住友商事で3000億（米国エネルギー関連）、丸紅で1500億（米国の食糧関連）など減損。各社が減損に苦しむ中、非資源分野に強みを持つ三菱商事と伊藤忠は健闘。伊藤忠は一過性の収益計上なども寄与し、2位の三井物産に比肩する利益規模(3000億)で並んだ年となった。
• 2016/3期
  • 2016年は米国大統領選でトランプ氏勝利や英国のEU離脱など衝撃的なイベントが世界を駆け巡った。年明け早々に中国株式市場の大暴落が世界同時株安を誘発し、原油価格も下落。
  • 三菱商事と三井物産が創業以来の最終赤字となるショッキングな年となる。資源分野の市況や実需動向などから、長期価格の見直しによる保有資産の減損処理等で、三菱商事が4200億、三井物産が3500億の一過性損失を計上したことが赤字の主因となる。非資源の割合が多い伊藤忠が強さをここでも発揮し、ついに利益水準で1位の座を獲得することになる。
• 2017/3期
  • 翌年の反動で各社ともV字回復を達成。
• 2018/3期
  • 2018年は米中貿易摩擦や日米通商問題、新興国通貨の下落など先行き不透明感が高まったものの、世界的な好景気の恩恵もあり7社中5社（三菱商事、伊藤忠、住友商事、丸紅、豊田通商）が過去最高益をたたき出す年となった。三菱商事は初の5000億円台、伊藤忠は初の4000億円台、住友商事は初の3000億台に乗せた。
• 2019/3期
  • 2019年5月に新天皇の即位。世界的にも継続して好調な市況環境を背景に、7社中6社（三井物産以外）が更なる過去最高益を記録した年となり、過去に例をみないほどの商社の好調ぶりがうかがえる年となった。

総合商社7社の総資産の推移 (10/3期～19/3期)

総合商社7社の株主資本の推移 (10/3期～19/3期)