丸紅の化学品・アグリ部門の取組は?ガビロンやヘレナなど北米重要子会社を擁する

丸紅の化学品部門の取組を見てみます。

丸紅の化学品はビジネスは 1950 年代、繊維用化学品のトレードから開始し、現在では石油化学品、塩ビアルカリ、合成樹脂、無機・農業化学品、機能化学品、電子材料の全分野をポートフォリオとして保持し、川上から川下までの幅広いビジネスを世界的に展開している。
中でも石油化学品分野では、ナフサや天然ガスを原料として製造されるオレフィン(エチレン、プロピレン、ブタジエン等)のトレードを 1970 年代から続けており、全世界で約 30% のシェアを誇るトップクラスのトレーダーとして君臨していることが特徴である。

化学品セグメントの位置づけ

19/4に組織改正があり、食料・アグリ・化学品グループが新設され、その傘下事業本部としてアグリ事業本部」、「化学品本本部」、「食料本部の3事業本部が敷かれた。本稿では、「アグリ事業部」と「化学本部」の取組を説明する。

出所:丸紅│中期経営計画2021

丸紅│化学部門の業績

20/3期は、。北米のガビロン減損などが影響し▲771億の大幅な最終赤字に終わった。

出所:丸紅│2020年3月期決算資料

 

 

本部別の取り組み

「アグリ事業本部」

主要取扱商品・分野

  • 農業資材(農薬、肥料、種子、自社ブランド品)の販売
  • 施肥・農薬散布など請負サービス提供
  • 精密農業など技術サービス提供
  • 農薬製剤の受託
  • 肥料原料
  • 穀物及び油糧種子(トウモロコシ・小麦・大麦・大豆・菜種・食用豆類など)の集荷及び輸出

競争優位性

① グローバルに拡大している農業資材事業

米国の農業資材の販売会社Helena Chemical(ヘレナケミカル社)は全米の農家に直接販売するネットワークを有するトップクラスの販社として業界内で確固たる地位を築いている。

地域の土壌や農法、法制度等を熟知した担当者が収穫を増やすために何が必要かをアドバイスするなど、各農家のニーズに応えた地域密着型のビジネスを展開。

1987年の買収当時120カ所だった販売拠点は全米で487カ所(2016年時点)に増加するなど成長を遂げ、現在、10万件の農家向けに農薬・肥料・種子等の農業資材の販売・総合サービスを提供している。19/3期の持ち分投資利益は230億円である。

<ヘレナケミカル社のビジネスモデル>

 

出所:丸紅│統合報告書2019

他国での取り組みとして、出資先である英国Agrovista UK社は英国の農業資材販売会社で20%の市場占有率を持つ。またオランダのMertens Holdingsも園芸資材販売会社として高付加価値商品を手掛けている。

また日本、マレーシア、ミャンマーなどで肥料・農薬の製造販売事業会社を保有しており、グローバルに農業資材事業拡大を進めている。

 

②米国における穀物集荷、輸出事業の展開

世界最大の穀物生産・輸出国である米国に、穀物収荷と販売事業のガビロン社、コロンビア・グレイン社、米西海岸に輸出ターミナルであるパシフィコ社を配し、日本はじめ世界各国の穀物需要にキメ細やかに対応できる体制を整備。穀物集荷の最前線では、肥料や種子販売も実施しており、グループ各社が緊密に連携し北米穀物の安定供給を実現。

 

ヘレナに並ぶ米国でのアグリ事業のもう一つの柱が穀物・肥料のトレーディングハウスであるGavilon Agriculture Investment(ガビロン)である。19/3期の持分投資利益は対前年▲9億円の21億円である。

カーギル(米)、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド/ADM(米)、ルイ・ドレフュス(仏)、ブンゲ(オランダ)、グレンコア(スイス)が世界の5大穀物メジャーと呼ばれる中で、ガビロンは準メジャーの位置づけである。

穀物メジャーを目指すべく2013年に2900億で買収したが、不適切な会計処理に関する損失計上や、米国の長引く天候不順に端を発した低温や多雨による洪水被害、作付け量の減少、流通停滞、貯蔵施設の浸水など業績の悪化が著しい。

上記理由で、買収以降たびたびガビロンで減損損失を計上しており、丸紅のお荷物事業となっているのは明らかである。2019年頃より、丸紅はガビロンの売却に向けて複数の買い手候補との交渉に入っているとのうわさである。

 

「化学品本部」

 

主要取扱商品・分野

  • 石油化学基礎製品および合成樹脂など誘導品
  • 塩およびクロール・アルカリ
  • 飼料機能剤、オレオケミカル、機能性食品素材などライフサイエンス
  • 電子材料、無機鉱物資源、肥料原料および無機化学品

 

競争優位性

①多岐にわたる化学関連製品を川上分野から川下分野まで幅広く展開

川上では塩・ホウ酸など無機鉱物資源分野で世界有数のサプライソースへの出資・融資により安定供給を確保、川下ではディスプレイ・太陽光発電・半導体・電池材料などのエレクトロニクス分野や機能材料・脂肪アルコールなどのスペシャリティケミカル分野および飼料添加剤を主としたライフサイエンス分野で収益に貢献できる案件を追求している。

 

②オレフィン・アロマ・合繊原料・合成樹脂・肥料原料等の取扱で業界トップクラス

特にオレフィン取引において特殊タンカーの用船を活用し、アジア・中東地域を中心に業界でトップクラスの地位を維持。またアロマ、合繊原料、合成樹脂、塩ビ、肥料原料についても、有力サプライヤ―との連携を通じて世界的に販売網を拡大している。

 

 

塩ビアルカリ事業については、原料の塩から製品の塩ビ樹脂まで一貫して取り扱っており、安定したビジネスを展開している。投資先の豪州Dampier Saltを通じて供給の井戸元をおさえている点が強みである。

 

飼料機能材に関しては、17年4月に買収したオランダの飼料機能材剤販売会社Orffa International Holdingが収益に貢献している。19年4月には保有株式比率を60%から80%へ引き上げた。19/3期の持分投資利益は14億円を稼ぎ出した。

 

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