丸紅の金属資源領域の取組を見てみます。
金属セグメントの位置づけ
丸紅では19/4に組織改正があり、金属事業は「電力・エネルギー・金属グループ」の中の「金属本部」が手掛けている。
丸紅│金属部門の業績
20/3期は▲57億の最終赤字に終わり、前期比▲464億円の大幅減益となった。
金属本部の取り組み
強みは鉄鉱石・石炭(豪州)、銅(チリ)の上流権益、特に銅の持分販売量は日本企業トップクラスを誇る
金属本部は、鉄鉱石、石炭、銅の鉱山開発事業、アルミニウム製錬事業、鉄鉱石、石炭、合金鉄、製鋼原料や非鉄軽金属原料のトレード、鉄鋼製品のトレードと事業投資などを行っている。
現状認識分析を以下に定義しており、強みはコスト競争力、優良事業パートナー、業界トップクラスの取扱量などに強みを持つ。
出所:丸紅│統合報告書2019
成長戦略として、豪州・チリの上流権益を核に中・下流へバリューチェーン拡大を狙う
AIやIoTを駆使した操業のコストダウンや中・下流へバリューチェーン拡大を狙う戦略を描いている。
なお、金属事業の川上~川中~川下におけるバリューチェーン展開は以下の通りとなっている。
(少し古いが2011年02月の丸紅 金属事業 紹介資料より抜粋)
事業領域別の取り組み
銅事業
主力の銅事業では、Marubeni LP Holdingを通じて、チリの銅鉱山開発を現地大手Antofagasta社と進めている。チリのセンチネラ銅鉱山とアントコヤ銅鉱山に30%、ロスペランプレス銅鉱山に9.21%出資しており、19/3期の銅の持分販売量は13万3000トンに達しており、日系企業トップクラスの販売量を誇る。
石炭事業
豪州のMarubeni Coalを通じて、豪州でコドリラ石炭鉱区など複数炭鉱を操業している。
鉄鉱石事業
Marubeni Iron Ore Australiaを通じて、世界最大級のRoy Hill鉄鉱山を操業している。鉄道・港湾整備などの総合インフラを自社保有し、AIやIoTを活用した操業最適化や生産性向上にも取り組んでいる。
アルミ事業
豪州ではMarubeni Alminium Australia社を通じて、またカナダではMarubeni Metals & Minerals社を通じてアルミ地金の製錬事業を手掛けている。
合金鉄事業
ブラジルおよびブータンにて高純度フェロシリコンの製造などを行っている。
国内関連事業
国内の事業会社では、伊藤忠との合弁である伊藤忠丸紅鉄鋼(鉄鋼トレード)や、丸紅テツゲン(鉄銅原料トレード)、丸紅メタル(非鉄金属トレード)、丸紅建材リース(重仮設鋼材リース)などが存在する。
結論:金属事業は、チリ銅山事業の採算性向上(市況変動に対する耐性強化)が喫緊の課題
以下は丸紅の金属および鉄鋼事業の18年度(19/3期)実績における主要会社の連結損益となる。
鉄鋼事業では、伊藤忠丸紅鉄鋼の持ち分利益+121億、金属資源では、豪州石炭事業(Marubeni Coal)が+254億、豪州鉄鉱石事業(ロイヒル事業)が+29億、チリ銅山事業(Marubeni LP Holding)+70億などが黒字を維持しているが、チリ銅山事業に関しては、対前年で販売量が増加した一方で、銅価格の下落などのあおりを受けて▲44億の減益となっている。
また、豪州のアルミ製錬事業やカナダのアルミ製錬事業が赤字となっている事が分かる。
以上より、丸紅の金属事業の課題は、チリ銅山事業の採算性向上(市場変動に対する耐性強化)および赤字のアルミ地金事業の損失を食い止めていくことだと思料。