住友商事のメディアデジタル事業の取組は?│DXやプラットフォーム戦略を打ち出し

住友商事の「メディア・デジタル部門」の取組見ていきます。

住友商事では、先進テクノロジー・ノウハウの活用、デジタル人材育成を促進し、全社的なデジタルトランスフォーメーション推進を行っている。

住友商事│メディア・デジタル部門の収益

20/3期のメディア・デジタル部門の利益は383億円である。国内の主力子会社の堅調な業績などに支えられたが、前年から▲92億円と減益となった。

住友商事│メディア・デジタル部門の事業戦略

メディア・デジタル部門は、「メディア事業」、「デジタルビジネス事業」、「スマートプラットフォーム事業」の3つの事業を柱としている。

出所:住友商事│統合報告書2019

本部戦略においては、J:COM、SCSK、MPTなど国内外コア事業の強化、デジタルメディアや映像コンテンツなど次世代新規ビジネスの創出、既存顧客基盤や情報通信インフラを活用したプラットフォーム展開を重要戦略と位置づけている。

住友商事│メディア・デジタル事業概要

メディア事業

ケーブルテレビ事業、番組供給事業、映像関連事業、ダイレクトマーケティング事業、デジタルメディア関連事業、映像コンテンツ関連事業、MRO(Maintenance Repair and Operations:消耗品の通販事業)を手掛けている。

  • 子会社のジュピターテレコム(J:COM)は年間300億円超の投資持分をもたらしており、メディアデジタル事業の収益の中核となっている。同社は、地域コンシェルジュ構想を掲げ、既存のテレビやインターネットに加えて、4Kサービス拡充、生活インフラサービス(ガス、電力、モバイル)、生活支援サービス(宅内サポート、金融、教育、地域スポーツ、ヘルスケア医療介護)などの充実を図る戦略である。

出所:住友商事│メディアデジタル事業部成長戦略

  • 国内テレビ通信事業では、ショップチャンネル社を有しており、年間80億円規模の投資持分収益を住商本体にもたらす。同社は、商品・番組力の強化を目指し、SNS展開や自社アプリ導入などにより顧客基盤の拡大を狙う。
  • デジタルマーケティング・プラットフォーム事業では、上記事業やリアル店舗小売り、EC事業などからの購買データを蓄積・活用し、マーケティングコンサルやメディアプランニングといったコンサルメディア提案の可能性を追求している。18年より同事業部内に設置したDXセンターとの組織連携も行っている。
  • 17年に米国The Chernin Group (“TCG”)と資本業務提携により、TCG傘下企業のOtter Media(デジタルメディア)、FULLSCREEN(広告収入型メディア)、Ellation(映像コンテンツ配信)も含む、デジタルメディアや映像コンテンツ領域での協業を発表した。
  • デジタルコマース事業では、ZORO ShanghaiMONOTARO INDONESIAといった中国・インドネシアにおける産業用間接資材の通販事業(Maintenance Repair and Operations:消耗品の通販事業)を手掛けるほか、タイのテレビ通販Shop Global社への出資や、収納サービス事業のサマリーポケットへ出資をした。
  • デジタルヘルス事業では、DeNAと合弁により健康保険加入者向け健康増進支援サービスKenCoMの運営を行うほか、イーウェル社への出資により福利厚生サービスのWELBOXの提供、医師とMR間のコミュニケーションツールを提供するDr. JOYなどを擁する。

 

デジタルビジネス事業

  • デジタルソリューション事業の中核会社にITシステムインテグレーターのSCSK社を持つ。同社は、既存の流通・金融・メディア向けサービスの拡充、戦略事業としての車載ビジネス・AI活用ビジネス、DXへの取組推進、日系企業の東南アジア展開支援(工業団地・スマートシティ)、などを戦略的な強化事業としており、18年にはベトナムIT最大手のFPTコーポレーションとの提携を発表した。またSCSK社は、ベリサーブ社やJIEC社を完全子会社化しグループ機能強化を図っている。

 

 

  • また、全社的なDXの推進を目的に、「DXセンター」という新組織を社内に設置CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)投資戦略テーマ別ソリューション(アグリテック、モビリティ、市況予測、予防検知)の発掘Tech Team(新技術取り込みのためのM&A/PMI支援を行うITデューデリジェンスチーム)の設立、などを行った。同組織が主導し、住友商事が出資した農業用ドローンのナイルワークス社、ストックホルムのカーシェアリング事業aimo社、マレーシアのマネージドケア事業者PM Careなどのデジタル化の取組を加速させている。
  • 新規事業投資分野では、アジア、EU、国内でベンチャー投資のヴィークルを活用し投資活動を活発化させている。米国のVCであるPresidio Venturesはシリコンバレーを中心とするベンチャー企業へ投資。香港のSumitomo Corporation Equity Asiaは中国・アジアを中心としたベンチャー企業へ投資。最近では、19年には、中国において国際物流のデジタル技術活用を行っているYunQuNa、AIサービス開発のシナモン、アジアの企業向けに保険販売・健康増進プラットフォームを提供するCVA Group、中国にて日系リテール企業向けにCRM(Customer Relationship Management)事業を行うYo-renなどへの出資を実行した。
  • アクセレーター分野では、米Plug and Play とIoT分野での協業を発表し、各種産業の有力企業とスタートアップ企業を結び付け新たな価値を創造する取組を行っている。19年には、中国や米国でアクセレータープログラム「HAX」およびVC運営を行う「HAX TOKYO」を立ち上げた。

スマートプラットフォーム事業

  • ティーガイヤ(国内携帯電話販売最大手)クオカード(プリペイドカード発行事業)を擁する。
  • ミャンマーでは、国営郵便・電気通信事業体(MPT)と共同事業にKDDIと共に参画を発表した。MPTは同国の形態電話加入者数で市場シェアNo1を誇る。さらに主要都市でのLTEサービスの開始、ブランドショップ展開、エンターテインメントコンテンツ配信、銀行口座に代わるモバイルマネー事業、携帯電話による小口融資のマイクロファイナンス、電力網に代わるオフグリッド発電といった各種サービスも展開する予定である。
  • ロシアではIXcellerate(データセンター事業)、Enforta(無線ブロードバンド事業)、 Russian Towers(タワーシェアリング事業)を展開している。
  • 新規事業では、海外スマートプラットフォーム戦略を掲げており、マレーシアの携帯通信事業者のAxiataグループとの協業を発表し、同社子会社でデジタル企業広告を行うAxiata Digital Advertising(”ADA”)へ出資を実行した。住友商事は、同社のデータマネジメントプラットフォームの高度化支援や、日系企業の開拓サポートといった機能提供を行う。
  • 更には、18年にシンガポールに事業会社SC-NEXを設立し、海外のスマートプラットフォーム事業を加速化を狙う。