丸紅の食料領域の取組を見てみます。
丸紅│食料セグメントの位置づけ
丸紅では19/4に組織改正があり、食料事業は「食料・アグリ・化学グループ」の中の「食料本部」が手掛けている。
丸紅│食料本部のセグメント損益
食料本部は、2018年度当期利益196億、2019年度195億円と安定した利益を出している事が特徴である。
全社ベースで最終赤字となった2019年度においては資源系が減損でことごとく悪化する中、「建機・自動車・産機本部」に次ぐ2番目の利益を確保するなど、非資源分野の中核事業として安定的な利益を創出している重要なセグメントである。
なお、減損などのニュースで話題になる米国ガビロン社(穀物収荷と販売事業)については、19/4の組織変更により、食料本部ではなく、アグリ事業本部の穀物海外事業部の所掌となった点に注意が必要である。
同じ営業グループのアグリ本部についてはこちらを参照。
丸紅│食料本部の取り組み
強みはコーヒー生豆(ブラジル)や牛肉(米国・豪州)
現状認識分析を以下に定義しており、強みは取扱量トップクラスのブラジルコーヒー生豆や米国豪州の牛肉のトレードなどに強みを持つ。
出所:丸紅│統合報告書2019
成長戦略として、食料・穀物のバリューチェーン拡大を狙う
事業領域別の取り組み
食料事業
食品事業
食品流通分野
- 食品卸の国分首都圏、菓子卸の山星屋、ナックス、
- 食品小売りではマルエツやマックスバリュ等展開するユナイテッド・スーパーマーケット、電鉄系小売である東武ストア、相鉄ローゼンなどの事業会社を中心にビジネスを展開している。
食品原料事業
- 中核会社の丸紅食品が油脂原料、食品大豆、乳製品、砂糖、小麦粉などを扱っている。
飲料原料事業
- コーヒー生豆は輸入販売シェアは業界1位の30%を誇る。コーヒー生産はブラジルのイパネマ農園 Cia Iguaçu de Café Solúvelを中心としており、現在はベトナムにも拡大している。
- 中国では、大手コーヒーチェーンのパシフィックコーヒーとの協業
水産事業
- アラスカの天然サーモンをてがけるNorth Pacific Seafoods、米国水産物輸入販売のEastern Fish、国内のベニレイなどを持つ。
畜産事業
- 牛肉を主力事業としており、豪州Rangers Valley Cattle Stationや米国のCreekstone Farms Premium Beefなどを持ち、プレミアムビーフの取扱数量を伸ばしている。
穀物事業
国内の穀物トレードを手掛けており、取り扱い量は総合商社トップである。
供給サイド(海外)
世界最大の穀物生産・輸出国である米国に、穀物収荷と販売事業のガビロン社、コロンビア・グレイン社、米西海岸に輸出ターミナルであるパシフィコ社を配し、日本はじめ世界各国の穀物需要にキメ細やかに対応できる体制を整備している。
需要サイド(日本国内)
大量の穀物を安定供給できる体制も整備している。
- 日本全国7か所に穀物サイロ群を保有
- 日清丸紅飼料(資料の製造・販売)
- 日清オイリオグループ搾油工場(製油事業)
結論:日本の食糧輸入量に左右されるものの、業績は極めて安定推移している事業
冒頭のセグメント利益でも示したように、産地の天候不順による供給ひっ迫、伝染病(豚コレラ)、日本の食糧需要の減退などの影響はあるものの、国内の穀物供給においては取扱量トップである等のリーディングポジションを確立しており、業績は極めて安定推移している事業である。一方で、資源系ビジネスのような爆発的な利益成長もないことから、今後は食料バリューチェーンの拡大や、プレミアム価格帯の食糧の取扱を増やすといった事業の展開が必要とされている。