丸紅の電力事業の取組は? IPP事業で抜群の地位を確立、脱炭素化の動きにも注目

丸紅の電力領域の取組を見てみます。

電力事業の位置づけ

丸紅では19/4に組織改正があり、「電力・エネルギー・金属グループ」の中の「電力本部」が事業を手掛けている。

新組織下において、電力本部とエネルギー本部が同じグループとなり、総合エネルギーソリューションを追求していく形となる。

出所:丸紅│中期経営計画2021

電力本部のセグメント損益

電力本部は、2018年度当期利益150億、2019年度90億円と規模感のある利益を出している事が特徴である。

全社ベースで最終赤字となった2019年度においては同じグループの金属事業・エネルギー事業が減損で赤字転落する中でも黒字を確保した格好である。

出所:丸紅│2020年3月期決算資料

 

電力本部の取り組み

丸紅は電力業界では抜群の地位を確立

丸紅の電力事業の歴史は、非常に長い。

海外向けの発電・送変電設備の納入や建設から始まり、海外でのEPC事業を経て、海外IPP、IWPP、電力卸売りなど事業投資・運営へ事業拡大してきた。

その後、2000年に三峰川電力買収により国内の発電事業に参入。2002年には電力小売り事業へ参入(国内で2番目)し、2015年には電力小売り事業を担う丸紅新電力も立ち上げ、電力のバリューチェーンを川下へと広げた。

EPCとは?
発電所の設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を受託する「建設工事請負契約」によるビジネスのことで、別名「フルターンキー契約」。
これは、鍵を回すだけで運転ができる状態まで仕上げて設備を納入するビジネスモデルを意味する。
IPPとは?
「独立系発電事業者(Independent Power Producer)」のことで、商社自身が発電設備のオーナーとなって電力をつくり出し、現地の電力公社などに販売する事業モデル
この中には、電力を作り出す際のエネルギーを利用し海水を淡水化して生活用水をつくり出す造水設備(Waterの頭文字を加えてIWPPと呼ばれます)が含まれることもある。

 

電力本部では、現状認識分析を以下に定義しており、発電事業と電力サービス事業のグローバルプレイヤーとして業界トップの地位を構築している事が強みである。

成長戦略として、低炭素社会対応、分散化電源、デジタル化に注目

丸紅は18年に大手商社の中でいち早く”脱石炭火力発電”を宣言し、原則として新規での石炭火力事業には取り組まない方針を示したことからも、低炭素社会への対応についてはかなり先行して取り組んでいる事が分かる。

また、18年当時の石炭火力による持分発電容量である3GWを2030年までに半減させる方針も打ち出したことで話題になった。

石炭火力の代替として再生可能エネルギーの比率を現在の10%から2023年に20%に引き上げる目標も掲げている。

 

 

事業領域別の取り組み

丸紅では、海外電力プロジェクト第一部~第四部、国内電力プロジェクト部、電力IoTソリューション事業部、電力アセットマネジメント部で構成されており、主に地域軸で発電事業、EPC事業、電力サービス事業などを手掛けている。

2019年3月時点での丸紅の国内外での持分発電容量は12003MWとなっており、IPP事業者としては業界トップクラスの発電容量となっている。

地域別の持分発電容量の内訳は、アジアで5336MW、中東アフリカで3282MW、米州で1820MW、欧州で1111MW、日本で454MWとなっている。国別では、フィリピン、インドネシア、シンガポール、ベトナム、カタール、UAE、オマーン、米国、ポルトガルなどが大きい。

海外IPP事業 (直近のプロジェクト)

インドネシア Jawa1ガス焚き発電プロジェクト

プルタミナおよび双日との共同事業となる、同国初の大型Gas to Power案件

発電容量1760MWの発電所に加えて、貯蔵容量17万平方メートルの養生LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)も併設するもの。現地電力会社のPLNと25年間の売電契約を締結。

Gas to Powerとは?
石炭ではなくガス炊きでの火力発電ニーズの高まりを背景に生まれた、「発電施設とガス関連施設を一体として開発する電力プロジェクト」の事を指す。陸上でのガス火力発電所の建設および洋上でのLNG貯蔵・再ガス化を可能とする施設(Floating Storage and Re-gasification Unit ”FSRU”)をパッケージで開発するものである。FSRUは陸上での建設よりも短納期・省コストで建設できるためメリットが大きい。上流施設:燃料ガスの採掘施設、燃料ガスをLNG化するための液化施設
中流施設:ガスを下流施設まで運搬するLNGタンカーやガスパイプライン
下流施設:LNG再ガス化施設(FSRU)や気化ガスを発電所に運搬するパイプライン
発電施設:発電所
送配電設備:発電所から消費先へのグリッドへの送電線

インドネシア ランタウ・デダップ地熱発電プロジェクト

仏電力大手ENGIEおよび現地のSupreme Energy、東北電力と4社合同で99MWの地熱発電所の建設と運営を行うもので、国有電力会社PLNに対して30年間にわたり売電を行う。

ジャマイカ Old Harbour天然ガス炊き複合火力発電所プロジェクト

発電容量194MW。19年より稼働。丸紅が 40%出資するジャマイカの電力会社である Jamaica Public Service Company Limitedが現在運営する重油焚き発電所を、高効率で環境負荷が小さい天然ガス焚き複合火力発電所で代替する案件。

アブダビ スワイハン太陽光発電所

発電容量1177MW。UAEのEmirates水電力公社と25年間の売電契約を締結。

オマーン アミン太陽光発電所

発電容量105MW。オマーン石油開発会社と23年間の売電契約を締結。

英国 ウェスタモスト ラフ洋上風力発電プロジェクト

発電容量210MW。丸紅の持分25%は譲渡済。

結論:業界トップのIPP事業基盤と脱炭素化による再エネ投資の動きに注目

見てきた通り、丸紅の電力事業は業界でリーディングポジションを確立しています。

また、IPP事業のビジネスモデルは、需要家(現地の電力会社等)との長期売電契約に基づくため、長期的に安定収益が見込めるところも魅力の一つです。

また、将来的に再生可能エネルギーの比率を高めていく方針ですから、太陽光、風力、水力、バイオマスなどの電源多様化の動きにも注目が集まるところです。

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