今日は、総合商社と日本のプラント・エンジアリング会社との関係性について見ていきます。
プラント・エンジニアリング業界の概要
プラントとは?
プラント・エンジニアリング会社とは?
プラント・エンジニアリング業界概要
1.プロジェクトが大規模・長期
エンジ会社が手掛けるプロジェクトはどれも規模が大きく、契約から納入まで3~4年程度と長期に渡り、納入後の性能保障も必要とされる。
そのような大規模かつ複雑なプロジェクトを手掛けている事から、ゼネコンと同じように4次~5次下請けまでが存在する重層下請け(ピラミッド)構造となっている事が特徴。
膨大な設計図面作成、資機材の調達、建設現場における多国籍人材の管理などプロジェクトマネジメントが非常に重要とされている。
エンジ会社にも営業部門はあるが、営業活動や資金調達のコーディネートを担う総合商社が重要な位置づけにある。
2.近年は海外勢との競争が激化
以前は日本企業はプラントエンジ分野ではトップクラスとされていたが、近年は中国や韓国などの海外企業が急速に成長しており、受注競争の激化している。日本の市場の成長が見込めない中で、中近東、東南アジア、アフリカ等の成長市場の受注割合が拡大しており、今後はこれらの需要に対応しながらも、工事技能者の退職者増加という人手不足、技能継承という内部的な課題にも取り組んでいく必要がある。
3.資源価格やエネルギー需要の影響を受けやすい
資源開発事業の設備投資の意欲に左右されるため、原油・資源価格や需要動向の影響を受けやすいのも特徴である。
2013年度以降、エネルギー需要、石化製品需要の増加を背景に、中東などを中心とした精製・石化プラント需要、北米などシェールガス・オイルに端を発するLNG設備などのエネルギー関連やガス由来のケミカルプラントなどの増加が顕著であったため各社とも恩恵を受けた形となるが、原油価格急落の影響を受けた2015年度は受有残高が大幅減となった。
また、大型案件の工期は長期化することも多く、納期の遅れなどによる損失は多額となることから、受注後の採算管理も重要な課題となる。
日本を代表するプラント・エンジニアリング会社といえば?
総合エンジ会社とよばれる、日揮、千代田化工建設(以下”千代田”)、東洋エンジニアリング(以下、”東洋エンジ”)の3社がエンジ御三家と呼ばれている。
メーカー系では、日立製作所、東芝系の東芝プラントシステムなど。
総合重機系では三菱重工業、川崎重工業、三井造船、日立造船、IHI、住友重機械工業など。
鉄鋼系では神戸製鋼所、JFEエンジニアリング、新日鉄住金エンジニアリングなど。
そのほか、特定分野に強い企業として石油・石油化学の新興プランテック、発電所関連の太平電業、鉄鋼・化学関連の高田工業所、熱絶縁工事の明星工業などが存在する。
総合商社とエンジ会社との関係
こちらの記事に分かりやすく書かれていたため掲載。(出所:RECRUIT業界図鑑)
総合商社は自社でプラント開発技術(設計や施工ノウハウなど)を持たないため、商社の事業領域である資源、エネルギー、化学、インフラ、などの分野ではエンジ会社はパートナーとして非常に重要な存在となる。
総合商社の機能としては、商社が持つ各国の資源メジャーや各国政府とのネットワークを駆使した情報収集や、プラント建設に係る中流・下流ビジネスの企画提案しまとめる能力、さらにはECA(JBICやNEXI)からのファイナンスの調達機能も重要な役割となる。
では、プラントエンジニアリング御三家と総合商社との関係を見ていきましょう。
日揮
日揮は独立系エンジ会社のため、商社との資本関係はない。日揮が得意とするLNG等の分野を中心に総合商社各社と事業協力を行っている。
- 三菱商事とはインドネシアのLNGプラント案件(2015年~)やカナダのLNGプラント案件(2018年~)など。
- 三井物産が手掛けるモザンビークでのLNGプロジェクトでは、LNGプラント設備を日揮や千代田などの企業連合群が手掛けることになる(2018年~)。また、中国重慶市でのビジネスパーク開発案件は、日揮と三井物産との共同事業となっている(2013年~)。
- 伊藤忠とは、フィリピンでのバイオエタノールの製造・発電事業(2010年~)を合弁事業として手掛けている。
- 住友商事とは、タイの高機能樹脂製造プラント(2018年~)や、ガーナ沖油ガス田向けFPSO保有・傭船事業(2017年~)での協力・合弁関係を構築。
- 丸紅とは、アブダビ首長国タウィーラ地区における発電・造水事業(IWPP事業)において出資パートナー関係にある。また、丸紅、JALやJXTGエネルギーらと共に、廃棄プラスチックを含む産業廃棄物 ・一般廃棄物などから代替航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)を日本で製造・販売することについての事業性調査を共同で実施すると発表した。(2020年~)
- 双日、三菱商事、伊藤忠、千代田、日揮らでコンソーシアムを組成し、トルクメニスタンにおける硫化水素など環境汚染物質を除去するガス前処理装置の建設プロジェクトへ参画検討が行われている(2015年~)。
- 豊田通商とは、同社が一部出資するフィリピンで火力発電所事業(2016年~)のEPCを請負実績あり。
千代田化工建設
千代田は1948年に三菱石油の工事部門が独立したことで設立されたため、三菱系列の会社である。
三菱商事は2019年に経営不振に陥った千代田の経営再建支援(増資と融資)を行う方針を固め、現在、千代田は三菱商事の連結子会社となっている。
- 当然三菱商事と千代田の事業面での結びつきは強く、シンガポールにおける水素社会実現にむけた協力に関する覚書締結(2020年~)。また、ポルトガルにおける浮遊式洋上風力発電事業へ出資参画(2015年~)、モンゴル新空港(2013年~)など様々な案件を共同で手掛けている。
- 三菱商事と三井物産が参画するロシアのサハリン2LNGプラントを千代田および東洋エンジが受注(2003年~)
- 三井物産は、三菱商事や千代田らと共に国際間水素サプライチェーン実証実験のコンソーシアムを組成(2017年~)
- 伊藤忠は、子会社の伊藤忠エネクスと千代田と共に、ミドリムシ製品の研究開発販売を展開するユーグレナとの資本業務提携を結んだ。(2017年~)
- 丸紅は、千代田と共同でUAEでの植物工場輸出の実証実験に参画。
東洋エンジニアリング
東洋エンジは、1961年に東洋高圧工業(現三井化学)の工務部門が分離独立したことにより設立されたため三井系列の企業である。
現在、三井物産は東洋エンジの筆頭株主であり、23%の持ち分を保有している。また、三井物産の安永社長は、機械プラント部門の出身で、自身も東洋エンジへの出向も経験されたほど関係は深い。
- 当然三井物産と東洋エンジは事業面でも深い関係にあり、インドネシアジャカルタでの都市高速鉄道(MRT)事業、ミャンマーでの水道事業(2013年~)、メキシコでの水事業(Atlatec社買収、2008年~)などを共に行った実績がある。
- 三菱商事と三井物産が参画するロシアのサハリン2LNGプラントを千代田および東洋エンジが受注(2003年~)
- 伊藤忠とは、ロシアの尿素生産設備(2009年~)やエチルベンゼン生産設備(2008年~)などの関係。
- 住商、双日・東洋エンジとは、アンゴラ向け肥料製造プラント(011年~)
- 双日は、東洋エンジが設立したタイの総合エンジ会社TTCL社に対する出資なども行っている。
- 丸紅は、東洋エンジと共同でモンゴル・ダルハン製油所建設 参画(2010年~)、エジプトでのポリエチレン製造設備(2013年~)などを行った。
以上、様々な分野で総合商社とエンジ会社との協働がなされている事がお分かりいただけたと思います。