伊藤忠のエネルギー事業の取組は?│上流権益の積極的な資産入替が利益貢献

伊藤忠のエネルギー関連事業の取組について見ていきましょう。

伊藤忠│エネルギー部門の収益

エネルギー事業部門の20年3月期当期利益は346億円

まずはセグメントの収益から。エネルギー事業は化学品事業と共に「エネルギー化学品セグメント」を形成しており、同セグメントの20/3期 当期利益は617億。

他の商社では、エネルギー事業は単独事業体として運営されていますが、伊藤忠だけは珍しく「エネルギー・化学品」セグメントという組織体を構成しています。非資源に強い伊藤忠ですから、このような形になっているんですね。

さて、同セグメントの利益はというと、前年比から▲166億の減益となったものの、伊藤忠においては、「金属」、「情報・金融」に次ぐ3番目に大きな利益を出したセグメントであることが分かります。

とはいえ、500億規模の大きな収益を出すセグメントが沢山あり、バランスの良い事業ポートフォリオを構築できているところは伊藤忠の強みでしょう。

伊藤忠│2020年3月決算│セグメント別

出所:伊藤忠│2020年3月期決算資料

次に「エネルギー・化学品」セグメント617億円の内訳をみていきましょう。
19年度(20/3期)実績の当期利益ベースでは、エネルギー事業が346億円化学品が272億円となっています。エネルギーは対前年で▲208億円と大幅な減益になっていますねが、前期の北海油田開発事業の売却益の反動のようです。
20年度(21/3期)の計画についても公表していますが、エネルギー事業の利益見込みは100億円と、さらに大きな下げ幅となっています。
伊藤忠│2020年3月決算│エネルギー化学品

伊藤忠のエネルギー部門の利益推移

以下は伊藤忠の時系列のオペレーティングセグメント別の当期利益の推移となる。黄色がエネルギー・化学品カンパニーの当期利益となっている。2015年度以降は、伊藤忠の稼ぎ頭に成長しつつあることが分かる。

出所:伊藤忠│統合報告書2019

伊藤忠商事のエネルギー事業

エネルギー開発やトレード(原油、石油製品、LPG、LNP、天然ガス、電力など)を主たる事業としている。

伊藤忠の投資方針としては、主として埋蔵量が大きく、エクソンモービルなどの一流のオペレーターがリードデベロッパーとなる良質な案件を峻別して参加している事に特徴がある。

以下は、伊藤忠が保有する、石油ガスプロジェクト、エネルギートレード、石油製品、オペレーターの拠点図である。

伊藤忠│エネルギーカンパニー│事業展開

出所:伊藤忠│統合報告書2019

 

それでは各事業分野毎に伊藤忠の取組を見ていきましょう。

石油・ガス開発事業

  • アゼルバイジャンにITOCHU Oil Explorationを通じて、ACGプロジェクト(日産58万バレル)で原油の開発・生産の操業が順調である。本件は1996年より参画している伊藤忠のエネルギー開発の中核案件となる。アゼルバイジャン国営石油企業(SOCAR)との生産物分与契約(PSA)を2049年まで延長が確定し、今後長期にわたって安定収益に寄与する予定。
  • ACGプロジェクトを通じて算出される原油を欧州に運ぶパイプライン(通油能力70万バレル)事業も行っている。
  • サハリン1プロジェクトではエクソンモービルらとサハリン石油・天然ガス開発生産事業を行っている。
  • 東シベリアプロジェクトでも操業は順調で、新しい鉱区内での探鉱評価作業を実施中である。日本南サハという、INPEXとJOGMECとのJVにて参画している。
  • 英領北海油田プロジェクトは、アセットの入れ替えの観点より、18年11月に英国CIECO Exploration and Productionの全株式を売却し、プロジェクトより撤退し19/3期の事業利益に大きな貢献を果たした
  • 同じ英領北海では、ノルウェーのEquinor社とのJVで探鉱事業に取り組んでいる。
  • 中東では、イラクにある世界最大規模の陸上油田であるWest Qurna1油田の権益19.6%を保有しており、こちらもエクソンモービルとの共同事業である。本件は、イラク政府からの請負業務(油田の操業・開発作業の技術サービスコントラクト)という形をとっており、油価の市況変動の影響を受けにくい優良案件とされている。

LNG事業

  • カタールのラスラファンLNGの操業
  • オマーンのオマーンLNGとカルハットLNGの操業

LPG事業

  • 国内のジャパンガスエナジー
  • インドのAegis Group International
  • フィリピンのIsla Petroleum & Gasなどの事業会社を持つ

石油トレード事業

  • 石油トレード事業を手掛けるシンガポールITOCHU Petroleum Coを持ち、権益原油を中心として東南アジアなど強固な客先を持っている。

国内リテール事業

  • 伊藤忠エネクス社を通じて国内市場への石油卸事業を行っている。同社は、2000軒のガソリンスタンドを持つ、商社系石油卸会社としては最大規模である。
  • また、同社は19年2月にインフラファンド「エネクス・インフラ投資法人」を上場させ、再生可能エネルギー発電設備への投資運用を行うなど再エネ分野への投資も積極的である

電力トレード

  • 電力トレード事業推進室が、国内の電力トレード事業を手掛けている。これは電力の卸売りを行う独立系事業者から電力を購入し伊藤忠のグループ内関連子会社へ販売する事業である。

 

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